2020年の都知事選で宇都宮健児候補に確認しておきたい一つのこと

もう10年ぐらい前になりますが、当時仕事で闇金の処理を依頼されることが少なからずありました。

闇金の貸付は最高裁の判例で不法原因給付であることが確定していますから法律的には利息のみならず元本すら返す必要はありません。

なので闇金案件の相談があれば闇金に電話をして「今後一円も返済しませんよ、手を引いてくださいね」と通知するわけですが、闇金さんは犯罪者集団ですからそうそう簡単に手を引いてくれるわけではありません。

もちろん法律の専門家が介入すればそれ以後の取り立ては時間の無駄なので損得勘定のできる合理的なそこそこ賢い闇金はあっさり手を引いてくれます。

しかし、バカな闇金はそこまで頭が回りませんから、なんだかんだと嫌がらせをして借主にお金を払わせようとするわけです。

特に、依頼人がいわゆる「借りパク(一円も返さずパクって逃げること)」しているような案件は闇金側も怒り狂ってなかなか手打ちに応じてくれないこともあったりします。

そうした案件では、まぁいろいろ対処の方法はあるわけですが、そのあたりのことはすでに別のサイト(脱・借金コム)で説明していますので、気になる方はそちらのサイトで闇金関連の記事を探してみてください。

まぁでも、闇金なんかと関わってもいいことなんか何一つないですから、闇金からお金を借りるなんてことだけはやめた方がいいです…っていうか絶対に借りちゃダメですね。

「東京都知事(○)…」の貸金業登録番号を詐称する闇金

ちょっと話がそれてしまったので話を本題に移します。

ところで、そうした闇金の案件が持ち込まれると、まずその相談者が借りた相手が本当に闇金か否かを確認するところから始めます。

具体的には、依頼人が借りた元本と約束した返済期限や利息、実際に返済した金額などを計算して利息制限法や出資法に違反していないかチェックするわけです。

なかには郵便で送りつけられてきたダイレクトメールや折込チラシなどで闇金に連絡を取って借り入れをしている相談者もいますから、そうした案件では依頼人にそのダイレクトメールやチラシを持ってきてもらってそれらをチェックします。

何をチェックするかというと、もちろん業者の名前や電話番号や住所(※もちろん住所なんてデタラメです)も確認するわけですが、そうしたダイレクトメールやチラシには、たいてい「東京都知事(3)123***」とか「関東財務局長(4)123***」とかいった番号が記載されているので、そうした番号を確認するわけです。

知らない人もいるかもしれませんので念のため説明しておくと、これは貸金業の登録番号なんですね。

貸金業は登録制で特定の都道府県に営業所がある場合はその都道府県知事の、2以上の都道府県に営業所がある場合はその地域の地方財務局長の登録を受けないと営業できませんし、貸金業の営業をする際は登録番号を表示することが義務付けられていますので、こうした番号を表示しているわけです。

たとえば、東京に営業所がある業者であれば「東京都知事(3)123***」とか、大阪に営業所がある業者であれば「大阪府知事(4)123***」とか、あるいは近畿地方に営業所がある業者であれば「近畿財務局長(5)123***」とか表示して客を募るわけです(※ちなみに括弧の中の数字は貸金業登録の更新回数を表します)。

もちろん携帯電話一本で営業しているいわゆる「090金融」などの闇金は登録なんかしていませんから、こうしたダイレクトメールやチラシに表示されている登録番号はデタラメです。

とはいっても法律の仕事である以上、登録番号が表示されていればそれが本当に正規の登録番号なのか確認を取らなければなりません。

登録番号の確認はWEB上でもできますが(https://clearing.fsa.go.jp/kashikin/)、登録や廃業の時期などによっては検索結果で表示されないものもありますので、念のため登録番号を管理している各都道府県庁や各地の地方財務局に電話を入れてその登録番号の業者が実在するか確認する必要があります。

たとえば「東京都知事(3)123***」と登録番号が記載されていれば東京都庁の担当部署に、「近畿財務局長(5)123***」と登録番号が記載されていれば近畿財務局に電話をして、そのダイレクトメールやチラシに表示されている業者名や住所、電話番号と登録番号が一致するか、確認してもらうわけです。

もちろん、先ほど説明したように闇金は登録なんてしていませんから「その番号で登録はありませんね」とか返事が返ってきます。

そうして無登録業者であることを確認したうえで、ダイレクトメールやチラシに表示されている電話番号に電話をして

  • 「オタクの貸付は出資法に違反してて違法ですよ」
  • 「貸金業登録もしてないし違法でしょ」
  • 「最高裁の判例で元本も返さなくていいって出てるから今後一切返済しませんよ」
  • 「最高裁の判例では今まで返済したお金は元本も含めてすべて借主が返還請求できるって出てるから今まで返済したお金は全額返してくださいね」
  • 「これ以上嫌がらせするならオタクの使ってる銀行口座凍結させちゃいますよ」
  • 「なんならその携帯電話も止めちゃいますよ?それでもいいの?嫌でしょ?」

なんてこと言いながら手を引かせるわけです。

まぁたいていの闇金はそれで引き下がるわけですが中には手を引かないバカな闇金もいたりして結構面倒くさいんです。そのあたりのことはすでに別のサイト(脱・借金コム)で説明していますので、気になる方はそちらのサイトで闇金関連の記事を探してみてください…ってのは先ほど言いましたね。ごめんなさい。

「前例がない」の一点張りで告発したがらない東京都

またまた話が横道にそれてしまったので話を本題に戻します。都知事選の話でしたね。

ところで、ダイレクトメールやチラシを使って集客している闇金の依頼があると今説明したように都道府県庁や地方財務局に電話を入れて登録番号の確認をするわけですが、とある依頼人が持ってきたダイレクトメールには「東京都知事(〇)○○○○○」という具合に登録番号が記載されていたので東京都庁に電話をして担当部署で調べてもらったんです。

案の定、登録番号はデタラメで無登録業者でしたから、業者に電話して交渉し、手を引いてもらって片が付いて依頼人と「良かったですね」と言いつつ「じゃ報酬くださいね」なんて言いながら報酬もキッチリ巻き上げて…もとい払ってもらってその案件は何事もなく片付けることができました。

ただ、そのダイレクトメールに書いてあった電話番号が「0120」のフリーダイヤルだったので(※もちろん繋がります)、「これってフリーダイヤルだからその契約から手繰っていけば闇金を簡単に捕まえられるんじゃねーの?」って気が付いたんですね。

いわゆる「090金融」はおそらく客から巻き上げたか違法な売買で手に入れたであろう携帯電話を使用して営業してるので捕まえるのは大変かもしれませんが、0120のフリーダイヤルを契約してるならその契約から居場所を簡単に割り出すことが出来るかもしれません。

自分の依頼人の件は片付いたけど、その闇金はまだ営業を続けてるわけですから、のさばらせておけば第二第三の被害者が出てしまいますので可能であれば警察に捕まえてもらった方が良いのですが、警察は暴行や傷害でも起きないと貸金業法違反の事実を認知したぐらいでは動きませんから、やるんだったらちゃんと告発状を作って告発する必要があります。

でも、依頼人は闇金からの取り立てがなくなればそれで満足で「そこまでしなくていいです」なんて言うので、やるんなら私が手弁当で告発の手続きを取らなきゃなりません。

もちろん、社会正義のためならそこまですべきなんですが、私はそこまで人間が出来ていないので報酬をもらえないことはできるだけやりたくないわけです。

で、どうしようかと思案していたところで「東京都知事の登録番号を騙って営業してるなら東京都に告発してもらえばいいんじゃね?」と思いついたんです。

その闇金は実際には登録していないのに「東京都知事(〇)○○○○○」の登録番号を騙って客を募っていたわけですから、登録番号を詐称して無登録で貸金業法を営んでいることになるので明らかな貸金業法違反です。

貸金業法違反には刑事罰があるのでその「東京都知事」の登録番号を詐称して営業していること自体が犯罪行為なんですね。

で、その「東京都知事(〇)○○○○○」の登録番号を管理している監督官庁は「東京都」なのですから、そうした犯罪行為の事実が判明した時点で監督官庁である「東京都」が告発するなり監督権限を行使して何らかの対処をすべきだと考えたんです。

それが正しいかどうかは知りませんが、少なくとも当時の私は東京都がそうすべきだと考えたんですね。

もちろん貸金業法の監督官庁は金融庁であって自治体ではありませんが「東京都知事」の登録番号は東京都が管理しているわけですから、それを詐称している業者を告発するぐらいの監督権限行使の責任はあると思ったんです。

で、とりあえずもう一度東京都の担当部署に電話して「他の被害者が出ても困るから東京都として監督権限を行使して告発とかしてもらえませんか」と頼んでみました。

ちなみに、これは10年前の話なので当時の都知事は石原慎太郎さんです。

で、その電話に出た東京都の担当者が何と言ったかというと「都としてそこまでやりません」とこう来たわけです。

「でも東京都知事の登録番号を詐称してるわけだから東京都が監督権限を行使して止めさせるべきなんじゃないですか」と聞いてみても

「おっしゃることはわかりますが、前例がないので都が告発することはないです」と返ってきます。

東京都は「前例がない」ことはやらないわけです。5分ほどやり取りしてもその担当者は「前例がない」の一点張りでなしのつぶてです。

「東京都が告発しないとこの業者の被害者は今後も広がっていきますよ、都が闇金を放置するのは問題じゃないですか」と尋ねてみても、最後には「そんなに告発したかったら自分でやったらいいんじゃないですか」と逆切れされる始末です。

結局どう話を向けても埒が明かないし、あまり長電話になりすぎると業務妨害みたくなっちゃうので電話を切りました。

ちなみに、これは東京都だけの話ではありません。他にも大阪府だったか福岡県だったかどこだったか忘れましたが電話した時も「府(県)の方で告発はしてないです」と言われたことがありますし、関東財務局だったか近畿財務局だったか忘れましたがどこかの地方財務局に電話した時も「財務局が告発することはないんじゃないですかね」と言われた記憶がありますので、どこの県庁や地方財務局でも同じだと思います(※地方財務局なんて金融庁の出先機関なんだから貸金業法違反の監督権限が確実にあると思うのですがね)。

もちろんこれは10年前の話で石原都政時代の話なので今は変わっているのかもしれませんが、ゼロゼロづくしの小池都政を顧みれば「前例がない」告発などするはずがないように思います。

都知事選候補者は「前例がない」ことはやらない都政を変えることができるのか

ダラダラと駄文を連ねてきたので何が言いたいかわからなかったかもしれません。ごめんなさい。

で、この記事のタイトルに戻りますが、つまるところ都知事選に立候補されている宇都宮健児さんに何を確認したいかというと

「あなたが当選したら、東京都の貸金業登録を詐称している闇金業者が確認できた時に積極的に監督権限を行使して告発等の対処をとるようになりますか」

という点です。

なぜ宇都宮健児さんに確認したいかというと、それは宇都宮健児候補が弁護士だからです。

宇都宮弁護士はサラ金など消費者問題の第一人者で闇金なども担当されているはずですから、闇金の問題は把握されているはずです。

なので、宇都宮健児さんにはこの点を確認したいと思うわけです。

もちろんこれは他の候補者にも聞きたい事項ではあるので山本太郎さんとか他の候補者の名前を出してもよいのですが、宇都宮健児候補は弁護士なので、その点を確認しておきたかったわけですね。

もっとも、今回の都知事選は実質的に宇都宮健児さんと山本太郎さんと学歴詐称疑惑で揺れているKさんの三つ巴の選挙戦になるでしょうし、学歴詐称疑惑で揺れているKさんが貸金業登録番号を詐称する闇金を告発するとは思えませんから、宇都宮健児さんと山本太郎さんの2人に聞けば事足りるわけですが…。

と言っても、こんなどこの誰が書いてるかわからない記事なんてお二方は読まないでしょうし、マスコミの目にも留まらないだろうから確認のしようがありません。

でも、コロナの影響で経済的に窮した人の闇金被害が増加する懸念もありますので、結構重要なテーマではあると思うんです。

誰かそこんところを確認してもらえませんかね?